2024.07.10
過敏性腸症候群の原因や症状
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome : IBS)は、大腸や小腸に潰瘍や腫瘍などの器質的異常がないにも関わらず、下痢や便秘といった便通異常や腹痛、腹部膨満感などの症状が現れる病気です。
過敏性腸症候群(IBS)は日本での有病率が10-20%と非常に高く、多くの人々に影響を及ぼしています。症状が継続的に現れるため、日常生活に大きな支障をきたすことが多いです。
一般的な診断基準としてRomeⅣ診断基準が用いられており、これに基づき慢性的な腹痛と排便異常といった症状の持続性と器質的異常が除外されることで診断します。
過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群の原因は明確には解明されていませんが、身体的および精神的なストレスが大きく関与していると考えられています。腸の敏感さや感覚の異常、腸の運動の異常が症状の現れる主なメカニズムとされています。
ストレスが腸に影響を及ぼし、腹痛やガス、吐き気などの症状を引き起こします。また、生まれつきの性格や育った環境も病気の発症に寄与するとされています。治療方法としては、薬物療法や生活習慣の改善が主要な対策となります。
過敏性腸症候群の主な症状
腹痛と排便の関係
過敏性腸症候群の主な症状の一つに、腹痛が挙げられます。腹痛は通常、排便によって軽減されるのが特徴です。このため、腹痛と排便行動には密接な関係があります。腹痛があった際に、排便をすると痛みが和らぐことが多いです。
しかし、一部の患者では排便後も痛みが続く場合もあります。これらの症状は、腸の感覚異常や腸運動の異常に起因すると考えられています。
下痢と便秘の反復
過敏性腸症候群のもう一つの主な症状として、下痢と便秘が交互に起こることが挙げられます。
患者さんによっては下痢が頻繁に起こる「下痢型」、または便秘が続く「便秘型」、さらにはこれらが交互に現れる「混合型」に分類されます。
例えば、男性には「下痢型」が多く、女性には「便秘型」が多いとされています。いずれの型の患者も、突然の強い便意や便秘による不快感を経験し、これらの症状が日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
過敏性腸症候群の診断方法
過敏性腸症候群の診断には、主に「Rome IV診断基準」が使用されます。この基準は、器質的異常がないにもかかわらず、持続的な腹痛や腹部膨満感などの症状が半年以上続き、症状が少なくとも週に一度以上現れることを条件としています。
また、便通の異常によって便秘型、下痢型、混合型、分類不能型の4つのタイプに分類されます。この診断基準を満たすことで過敏性腸症候群と診断されますが、他の疾患の可能性を排除するために、血液検査や便潜血検査などのほか、大腸内視鏡検査も行うことがあります。
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を勧める理由は、過敏性腸症候群を診断するというわけではなく、大腸がんや炎症性腸疾患などの重大な疾患の可能性を排除するために有効だからです。
セルフチェック方法
過敏性腸症候群のセルフチェックには、日常生活の中で以下のような症状があるかどうかを確認することが有効です。
- 頻繁に腹痛や腹部の不快感を感じる場合、それが排便によって改善される
- 下痢と便秘が交互に現れることがある
- 排便しても残便感がある
- ガスがたまりやすくお腹が張っていることが多い
- 吐き気を感じることが多い
これらの症状が継続的に現れる場合は、専門医の診断を受けることをお勧めします。自己判断で症状を軽視せず、早期の診断と適切な治療方法を選択することが重要です。
過敏性腸症候群の治療法
薬物療法
過敏性腸症候群(IBS)の治療方法の一つに薬物療法があります。薬物療法は、症状の緩和を目的として、下痢や便秘に対応した薬を処方します。
さらに、腹痛やガスによる膨満感を和らげるための抗けいれん薬や抗ガス薬も使用します。
薬物療法はあくまで症状の緩和を目指したものであり、根本的な原因を解消するものではありません。
市販薬でコルペルミンとセレキノンSといった過敏性腸症候群に効果のあるものもありますが、ご自身の症状に合った薬を服用することが大切です。
便秘薬や下痢止めなどの市販薬で済ませている方も多いと思いますが、繰り返し便秘や下痢の症状に悩んでおられる方は過敏性腸症候群(IBS)の可能性がありますので受診するようにしてください。
食事療法
過敏性腸症候群の症状緩和には、食事療法が有効です。その中でも特に推奨されるのが低FODMAP食です。FODMAPとは、小腸で吸収されにくい発酵性オリゴ糖、二糖類、単糖類、及びポリオールを指します。これらの成分は腸内でガスを生成しやすく、過敏性腸症候群の方にとっては症状を悪化させる原因となります。
具体的には、いも類や豆類、りんごやマンゴーなどの果物、小麦などがFODMAPが高い食品として挙げられます。これらを避け、低FODMAP食を意識することが、腹痛や下痢といった症状の軽減に効果的です。
生活習慣の改善
過敏性腸症候群の治療において、生活習慣の改善も非常に重要です。まず、規則正しい食生活を心がけることが大切です。食事のタイミングを一定にし、一度に大量に食べ過ぎないようにすることで腸への負担を軽減できます。また、飲食物の選択にも気を配る必要があります。ガスを発生させやすい食品や脂肪分の多い食品は避けるよう心がけましょう。
また、十分な睡眠をとることも重要です。睡眠不足は身体的なストレスを引き起こし、過敏性腸症候群の症状を悪化させる可能性があります。毎日の生活習慣を見直し、健康的な生活を送ることが過敏性腸症候群の症状を和らげることにつながります。
適度な運動
適度な運動も過敏性腸症候群には効果的な治療方法の一つです。運動は消化器系の機能を改善し、ストレスを軽減する効果があります。ウォーキングやヨガなどの軽い運動を日常生活に取り入れることをおすすめします。過度な運動は体に負担をかけるため避け、適度な運動量を維持することが大切です。体を動かすことで血行が良くなり、腸の運動も正常化しやすくなります。
ストレス管理
過敏性腸症候群(IBS)の原因として、ストレスが大きな影響を与えることが知られています。ストレスは腸の敏感さを増し、腸の運動機能や感覚の異常を引き起こします。これにより、腹痛、下痢、便秘、吐き気などの症状が現れます。ストレスがうまく管理できないと、症状が悪化することがあるため、ストレス管理は非常に重要です。
趣味や好きな活動に時間を費やすこともストレス管理に有効です。日常の小さな楽しみを見つけ、リラックスする時間を持つことが腸の健康に対する良い影響を与えます。また、心理療法やカウンセリングもストレスに対処するための有効な方法です。
京都市伏見区のなかた内科・胃腸内科クリニックでは、日本消化器病学会消化器病専門医であり、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医である院長が、必要に応じて大腸カメラ(大腸内視鏡検査)に行った上で、過敏性腸症候群の診断・治療をいたしますので、気になる症状があればご相談ください。