下痢や腹痛の原因かも?炎症性腸疾患(IBD)について

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2025.01.20

下痢や腹痛の原因かも?炎症性腸疾患(IBD)について

炎症性腸疾患(IBD)とは

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炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease、IBD)は、腸管に慢性的な炎症を引き起こす疾患群の総称です。その中でも代表的な疾患として、潰瘍性大腸炎とクローン病が挙げられます。これらは、主に下痢や腹痛をはじめとする症状が繰り返し発生し、患者の生活の質に大きな影響を及ぼす国の指定難病であり、近年、日本でも患者数が増加しています。

代表的な2つの疾患:潰瘍性大腸炎とクローン病

炎症性腸疾患(IBD)には潰瘍性大腸炎とクローン病という2つの代表的な疾患があります。潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症や潰瘍が発生する疾患で、血便や下痢、腹痛が主な症状です。一方で、クローン病は消化管全体に炎症が生じる可能性があり、小腸と大腸が特に影響を受けやすい疾患です。深い潰瘍や狭窄、瘻孔などが特徴的で、患者は体重減少や倦怠感、慢性的な痛みに苦しむことがあります。
これらの疾患はどちらも寛解と再発を繰り返す性質を持ち、適切な治療が必要です。

炎症性腸疾患(IBD)の特徴的な症状

炎症性腸疾患の主な症状には、慢性的な下痢、腹痛、血便、発熱、倦怠感があります。これらに加えて、関節痛や皮膚炎、眼の炎症などの全身症状も見られることもあります。症状の程度や経過は患者ごとに異なり、日常生活や仕事に大きな影響を与えます。
また、症状は「活動期」と「寛解期」を繰り返すため、患者にとって治療の継続や一貫した管理が重要となります。さらに、疾患による体力低下や精神的な負担は、社会的な活動にも制約をもたらすことが少なくありません。

発症のメカニズム

炎症性腸疾患(IBD)の発症メカニズムは完全には解明されていませんが、遺伝的要因、免疫機能の異常、環境要因が複雑に絡み合っていると考えられています。正常では腸内細菌に対して免疫が過剰に反応しないよう抑制されていますが、炎症性腸疾患(IBD)ではこのバランスが崩れ、免疫系が腸管を攻撃して炎症を引き起こします。また、ストレスや食生活の変化、感染などの環境要因が発症や悪化に関与することが示唆されています。

炎症性腸疾患(IBD)の主なリスクファクター

1.免疫異常が関与する仕組み

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炎症性腸疾患(IBD)の発症には、免疫系の異常が深く関わっています。潰瘍性大腸炎やクローン病の患者では、本来であれば体を守るために働く免疫反応が過剰に活性化し、腸管組織に不要な炎症を引き起こします。この免疫異常は、腸内環境に存在する細菌やウイルスなどの通常は無害な刺激に対しても過敏に反応することで進行します。その結果、腸粘膜の障害や慢性的な炎症が生じ、下痢や腹痛などの症状が現れるのです。

2.遺伝的要因の可能性

炎症性腸疾患(IBD)の背景には、遺伝的な要因の関与も指摘されています。近親者に炎症性腸疾患を持つ人がいる場合、同じ病気を発症するリスクが高まるという観察結果が報告されています。最近の研究では、IBDに関連するいくつかの特定の遺伝子変異も明らかになっています。これらの遺伝子の異常は、免疫機能や腸内細菌との相互作用に影響を及ぼす可能性があると考えられています。ただし、遺伝だけが決定的な要因ではなく、環境因子との複雑な相互作用によって発症リスクが高まるとされています。

3.環境要因:食事やストレスの影響

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現代の生活習慣や環境要因も炎症性腸疾患(IBD)の発症に関与しているとされています。特に高脂肪・高糖質の食事や加工食品の多い食生活は、腸内細菌のバランスを乱し、炎症を引き起こしやすい腸内環境を作る可能性があります。また、ストレスが腸内免疫系の働きを低下させることで、炎症性腸疾患(IBD)の引き金となる場合もあります。さらに、都市部での生活や衛生状態が向上しすぎた結果、自然な免疫刺激が減少し、それが腸の免疫異常を招くという「衛生仮説」も提唱されています。

4.感染や腸内細菌との関連

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炎症性腸疾患(IBD)の発症には腸内細菌の構成や感染症との関連性も指摘されています。腸内には「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」と呼ばれる多種多様な細菌が共存し、健康な腸内環境を維持しています。しかし、これらのバランスが崩れたり有害な病原菌に感染した場合、免疫系が過剰に反応して腸管に炎症が生じることがあります。また、クローン病や潰瘍性大腸炎の患者では腸内細菌の多様性が低下しているケースが多く確認されており、これが病気の進行にどのように寄与しているのかが現在も研究されています。

炎症性腸疾患(IBD)の治療法と管理方法

1.薬物療法の種類と目的

炎症性腸疾患(IBD)の治療において、薬物療法は欠かせない中心的な役割を果たします。その目的は、腸管の炎症を抑え、症状を改善し寛解状態を維持することです。薬物療法の種類としては、5アミノサリチル酸、ステロイド剤、免疫抑制剤、生物学的製剤などがあります。ステロイド剤は炎症を急速に抑える効果があり、主に急性期に用いられます。
一方、免疫抑制剤や生物学的製剤は、長期的な寛解維持や再発防止に効果を発揮します。

2.手術が必要な場合

炎症性腸疾患(IBD)の治療では、薬物療法で症状が十分にコントロールできない場合や、合併症が進行した場合に手術が検討されます。潰瘍性大腸炎では、大腸に穴が開く「穿孔」が見られる場合や癌ができてしまった場合は、手術の適応となります。
一方、クローン病では、炎症や狭窄によって腸管が重度に損傷した場合に、患部の切除手術や人工肛門の作成が必要になることがあります。

炎症性腸疾患(IBD)の診断方法

1.血液検査や便検査による診断

炎症性腸疾患が疑われる場合、血液検査や便検査は基本的な診断手段として用いられます。血液検査では、炎症を示す血液中のC反応性タンパク(CRP)の値や白血球数の増加が確認されます。また、貧血や栄養状態の異常も確認することができます。
一方、便検査では、炎症に関連する便中カルプロテクチンという物質の量を測定し、腸管の炎症の有無を評価します。これらの検査により、どの程度腸で炎症が進んでいるのかを明確にすることが可能です。

2.内視鏡検査の役割

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炎症性腸疾患(IBD)の確定診断には、内視鏡検査が欠かせません。特に大腸内視鏡検査では、潰瘍性大腸炎やクローン病による腸管の炎症や潰瘍の範囲、重症度を直接観察することができます。この検査の際には、必要に応じて腸粘膜の一部を採取し、病理学的に検査することで、具体的な病変を特定します。

また、内視鏡検査は炎症性腸疾患(IBD)と他の消化器疾患との鑑別にも役立つため、正確な診断のために非常に重要な役割を果たします。

当院の大腸内視鏡検査の特徴

1.AIによる病変の検出支援機能

AIによる病変の検出サポート(OLYMPUS社のEndoBrain)を京都府下のクリニックで初導入しました。AIによる検査画像の膨大な学習により、病変を検出する感度96%、特異度98.0%の診断支援精度を誇ります。

大腸内視鏡検査中の画像をAIが解析し、ポリープ・がんなどの病変候補を検出するとリアルタイムに音と画面上の色で警告し検出位置が枠で表示されます。

肉眼で判断しづらわずかな病変も見落とすことがないように、AIの検出機能も利用して、精緻な大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を受けて頂けるようにしています。

2.鎮痛剤を使用した無痛の大腸内視鏡検査

当院では、鎮静剤を使用することで、患者さんが半分眠っている間に苦痛を感じることなく大腸カメラ(大腸内視鏡検査)が終了する無痛の内視鏡検査を提供しています。

大腸カメラを以前に受けて「検査時に痛い思いをした」「検査後にお腹の張りが辛かった」という理由でやりたくないという方もいらっしゃると思いますが、痛みを感じることなく大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を受けていただけますので、京都市のなかた内科・胃腸内科クリニックにご相談ください。

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