食道がんとは?症状や原因、治療方法について

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2025.05.23

食道がんとは?症状や原因、治療方法について

食道がんとは?

食道がんは、のどと胃をつなぐ食道の粘膜から発生する悪性腫瘍です。日本では扁平上皮がんがほとんどを占め、喫煙と飲酒が主要なリスク因子とされています。

初期には自覚症状が乏しいため発見が遅れがちですが、進行すると食べ物がつかえる感じ、胸の痛み、体重減少などが現れます。診断は主に内視鏡検査や生体検査で行います。

治療は食道がんの進行度に応じて、内視鏡的切除、手術、放射線治療、薬物療法(化学療法、免疫療法)、またはこれらの組み合わせで行います。早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、リスク因子を持つ方は定期的な検診を推奨しています。

食道がんの種類:扁平上皮がん・腺がん

食道がんは、主に以下の2つの組織型に分類されます。

扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)

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扁平上皮がんは、食道がんの約90%を占める最も多く見られるタイプです。食道の表面を覆う扁平上皮細胞から発生します。
主なリスク因子は喫煙と飲酒で、特にアルコール分解酵素の働きが弱い体質(お酒で顔が赤くなる人)の人は、食道がんの発症リスクが高いとされています。また、口腔、喉頭、肺など、他の部位にも発生することがあります。

腺がん(せんがん)

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腺がんは、食道がん全体の約7%程度を占めており、日本においては比較的まれなタイプです。
主に食道の下部に発生し、胃酸の逆流によって食道の粘膜が変化する「バレット食道」を前段階として発生することが多いのが特徴です。肥満や逆流性食道炎がリスク因子とされており、近年、日本でも増加傾向にあります。

さらに、発生した部位によって、以下の3つに分けられます。

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  • 頸部食道がん
    食道の入り口から約3cmの範囲
  • 胸部食道がん
    頸部食道の下から横隔膜までの約20cmの範囲(上部、中部、下部に分けられ、特に中部が約50%を占める)
  • 腹部食道がん
    横隔膜から胃の入り口までの約2cmの範囲

食道がんの原因・リスク因子:喫煙や飲酒が大きな要因

食道がんの主な原因・リスク因子は、大きく分けて以下の通りです。これらの要因は、特に日本人に多い扁平上皮がんにおいて強く関連しているとされています。また、年齢(50歳以降に増加)、男性に多い、野菜や果物の摂取不足などもリスク因子として挙げられます。

喫煙

タバコに含まれる発がん性物質が、食道の細胞に直接ダメージを与え、がんのリスクを高めます。喫煙年数が長いほど、また1日の喫煙本数が多いほどリスクは上昇します。

飲酒

アルコールを摂取すると体内でアセトアルデヒドという発がん性物質が生成されます。特に、このアセトアルデヒドを分解する酵素の働きが生まれつき弱い人(お酒を飲むと顔が赤くなる人など)は、アセトアルデヒドが体内に残りやすく、食道がんのリスクが大幅に高まります。

喫煙と飲酒の併用

喫煙と飲酒の両方の習慣がある場合、食道がんのリスクはそれぞれ単独で行うよりも相乗的に高まります。

熱い飲食物の摂取

熱すぎる食べ物や飲み物を繰り返し摂取することで、食道粘膜に慢性的な刺激が加わり、がんのリスクを高める可能性があります。

逆流性食道炎・バレット食道

胃酸が食道に逆流し、食道粘膜に炎症が続く「逆流性食道炎」や、それによって食道の粘膜が変化した「バレット食道」は、特に腺がんの発生リスクを高めます。

早期発見が大切な食道がんの症状

食道がんは、初期にはほとんど自覚症状がないことが大きな特徴です。そのため、早期発見が難しいがんの一つとされています。
がんが進行するにつれて、以下のような症状が現れることがあります。これらの症状は、食道がん以外の病気でも起こりうるため、症状がある場合は自己判断せずに、消化器内科を受診して正確な診断を受けることが重要です。特にリスク因子がある場合は、症状がなくても定期的な健診(内視鏡検査など)を受けることが推奨されます。

早期・中期に現れる可能性のある症状

飲食時の胸の違和感・しみる感じ

熱いものや刺激のあるものを食べたときに、胸の奥がチクチクする、しみるような痛みを感じることがあります。これは食道の粘膜にがんができたことで、炎症や刺激が起きている可能性があります。一時的に症状が消えることもあります。

飲食物がつかえる感じ(嚥下困難)

がんが大きくなり、食道の内側が狭くなることで、食べ物や飲み物がスムーズに通りにくくなります。
最初は固形物で感じることが多く、進行するとおかゆや水でもつかえるようになります。
のどにつかえる、胸につかえる、胃に落ちていかない、といった表現をされることがあります。

進行期に現れる可能性のある症状

胸や背中の痛み

がんが食道の壁を越えて、周囲の臓器(肺、大動脈、心臓、背骨など)に広がると、持続的な痛みが生じることがあります。
食事とは関係なく、常にズキズキとした痛みを感じることもあります。

体重減少

食事がスムーズに摂れなくなることや、がん細胞がエネルギーを消費することで、体重が減ることがあります。
特に、食事量を減らしていないのに体重が減少する場合は注意が必要です。

声のかすれ(嗄声)

食道の近くには、声帯を動かす「反回神経」という神経が通っています。
がんがこの神経に浸潤すると、声がかすれたり、出にくくなったりすることがあります。

咳(せき)

がんが気管や気管支に及んだり、食道と気管の間に「ろう(瘻孔)」と呼ばれる穴が開いたりすると、誤嚥(ごえん)を起こしやすくなり、飲食物が気管に入ってむせるような咳が出ることがあります。

吐血、下血、貧血

がんからの出血により、吐血や黒い便(タール便)が見られたり、慢性的な出血によって貧血になったりすることがあります。

食道がんの治療方法

食道がんの治療は、がんの進行度(ステージ)、患者さんの全身状態、年齢、合併症の有無、そして患者さん自身の希望などを総合的に考慮して決定されます。複数の治療法を組み合わせる「集学的治療」が一般的です。

内視鏡的切除(内視鏡治療)

内視鏡的切除による食道がん治療は、リンパ節転移の可能性が低い場合に限られます。
口から挿入した内視鏡を使って、がんのある粘膜を切除します。体への負担が少なく、食道を温存できるメリットがあります。

手術(外科治療)

がんがまだ他の臓器に大きく広がっていない場合に選択されます。
がんを含む食道の一部または全部と、周囲のリンパ節を切除します。切除後は、胃や大腸の一部を使って新しい食物の通り道(再建)を作ります。
がんの位置によっては、頸部、胸部、腹部の複数の箇所を切開する場合があります。

放射線治療

高エネルギーの放射線をがん細胞に照射し、がん細胞を破壊する治療法です。手術が難しい場合、または手術後の再発予防、あるいは化学療法と組み合わせて使用されます。
がんのある部位とその周辺に限定して効果を発揮します。

薬物療法(化学療法、免疫療法)

化学療法(抗がん剤治療)は、進行したがん、手術の前後(術前・術後補助化学療法)、再発したがん、または他の臓器に転移したがんに対して行われます。
また、免疫療法は、特定の進行がんや再発がんに対して、近年注目されている治療法です。免疫チェックポイント阻害薬などを用いて、患者さん自身の免疫細胞ががん細胞を攻撃する力を高めます。

まとめ:初期症状が乏しい食道がんは早期発見・治療が重要

食道がんは早期発見・早期治療が非常に重要です。食道がんの症状がみられたら、すぐに医療機関を受診することが最も重要です。特に、食べ物や飲み物がつかえる、胸の違和感や痛み、体重減少などの症状がある場合は、早めの受診を強くお勧めします。
なかた内科・胃腸内科クリニックでは、内視鏡専門医による正確で丁寧な診察・検査が可能です。自覚症状が出た時点で、ある程度進行している可能性もありますので、「もしかしたら」と思ったら迷わず医療機関を受診してください。

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